先日ロベール・クートラス展に行った。
クートラスを初めて知ったのは、去年新聞の書評欄でだ。
僕の夜 という題名に惹かれ読んでみると、画集だという。夜な夜な制作されたという手のひらに収まるサイズのカードのような絵の小さな画集を実際に手に入れたのはちょうど一年前。
生前はあまり評価されず、貧困の中、小さな厚紙に描かれた絵の数々。暗めの画面に模様や擬人化されたように感じる動物、おどけておかしなポーズをとる道化のような人物など、じっくりとながめていたくなる魅力的な作品たち。洗練された装丁や、挿入された文章もあいまってお気に入りの本の中の一冊になった。
展示をしていたのは、洋館のようなかわいらしい建物の一階にある小さなギャラリー。雑誌ミセスに一年間クートラスについての連載がされていたこともあってか(実際自分も個展があることも誌面で知った)ひっきりなしに人が来ていた。
ギャラリーには、カルト(カードの作品)、小さなオブジェたちがセンスよく展示されていたが、実際の作品を見て、それらが持つ軽やかな雰囲気に驚いた。
書評や画集からの限られた情報で、勝手に偏屈で暗い人物像を思い描き、作品ももっと重く暗いもの(そういうのきらいじゃない)を想像していたから。
でも実際のカルトは、ずっと軽やかで明度の低いなかでも色彩豊かで、センスとユーモアにもあふれるような、小さな画面の端まで神経が行き届いた職人技の感じられるものだった。
作品を管理している女性のクートラスについての手記をギャラリーで購入した。きっと想像していたのとは違う人物像が書かれているにちがいない。読むのが楽しみである。